今日もどこかへ帰りたい

帰る場所なんてない、都合のいい女の独り言

好きになりたい

眉間にキスをされるのが好きだ。ベッドの中で、不意に抱き寄せられて、なに、と言わんばかりに見上げると、慈しむような優しい視線で見つめられ、眉間にそっと唇が降りてくる。その瞬間が好きだ。それから自然な流れで、顎に手が添えられ、柔らかい唇同士が…

丸めたティッシュ

賢者タイムという言葉があるように、セックスの後の彼はいつも気怠げだ。ぼんやりとした眼差しでスマートフォンの明かりを目で追っている。彼の男のくせに細くて長い指が、上に下に、右に左にと画面をスワイプするたびに、忙しく黒目が動くのが見えた。薄暗…

無敵の集団

本日、職場からの帰りの出来事である。 今日も1日頑張った、とため息をつき、左耳、右耳とイヤホンをさしながら、地下へ向かう職場のビルのエスカレーターに飛び込む。時間帯が時間帯であるため、下りのエスカレーターはぎちぎちなくらいに人が並んでいたが…

いぬのきもち

主人の帰りを待つ犬の気持ちをご存知だろうか。 毎日仕事に出かける主人を遠く離れた場所で想い、その帰りを待ち焦がれる犬の気持ちを。 わたしは、なんとなくだけれど、その気持ちがわかる。 というのも、2年ほど前、わたしは「犬のようなもの」だったから…

乾かない洗濯物

本州の雪の降らない地方では、冬でも洗濯物を外に干すということを、わたしは大人になって初めて知った。 むしろ、わたしの実家では夏でも洗濯物は室内に干すのが普通だった。外に干すのは、主に寝具などの大きな洗濯物だけだったので、洗濯物というのは、特…

事故物件

わたしは事故物件である。 まず、見た目が悪い。 目が小さい。鼻も小さいし口も小さい。それなのに顔が大きい。太っているから二重顎だし、首が短いし肩周りだってちょっとした屈強な男くらいのボリュームがあるから、なんだか厳つい。唯一それなりに自慢で…